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代表取締役が語る『これまでの自分は本当にイケていなかった』全社員の前でのリボーン宣言を経て立ち返る人生のパーパスとは

2025年度に13期を迎えるブレインズコンサルティング株式会社。これまでの歩みと今後目指す姿について、コーポレートデザインチームが同社コンサルタント(関、佐藤)と共に代表取締役平瀬へインタビューを行いました。


代表取締役 平瀬 正博
京都工芸繊維大学卒業後、1990年に某ベンチャー企業入社。システムエンジニア、物流コンサルタントの経験を経て、2002年フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)株式会社入社。2008年同社を退職し、ブレインズテクノロジー株式会社を設立。代表取締役としてITマネジメントのコンサルティング事業とエンタープライズサーチ事業を推進。2013年、ブレインズコンサルティング株式会社を新たに設立。代表取締役として、真に顧客サイドに立ったITコンサルティング事業に加え、AI関連技術の研究開発・サービス開発を推進。

椅子も机もない中のスタート

――創業当時のことを教えてください

平瀬:2013年8月8日に前の会社(ブレインズテクノロジー株式会社)から分社する形で今の会社を新たに創りました。設立から1カ月半はオフィスもなく、渋谷のカフェで今で言うノマドワークをしていました。おかげさまで創業当初から仕事はあり、見積書の電話番号の記載に苦労したり、前の会社から仕事を引き継ぐうえで当時の特定派遣の許可を得る際にオフィスの契約が間に合いあいそうになかったり(注:当時の特定派遣の許可を得るためにはオフィスが必要、レンタルオフィスは不可)、その他諸々、色んなことがフライングと綱渡りの連続でした。

机もないオフィスで仕事をする様子

9月下旬に茅場町に17坪のオフィスを借りて3人でスタートしましたが、間もなくして大型案件が受注でき、週に二日は徹夜する生活に入ります。徹夜の際のホテル代を節約するのに折り畳み式のソファーベッドを買って寝泊まりしたり、大阪出張には夜行バスを使ったりと、そんな時代でした。

「コンサルティングとサービスの両輪」と大いなる野望

――創業時にはどんな会社にする計画だったのでしょうか

平瀬:「顧客の“懐刀”」という立ち位置と、「コンサルとサービスの両輪でお客様に価値を届けたい」という軸がありました。コンサルで人と技を鍛え、サービスでスケールする、コンサルの顧客にサービスを提供し、サービスの顧客にコンサルを提供するという好循環の世界をどうしても創りたっかたんですね
それで、初めて手がけた製品が「Amic-S」というシステム部門向けの障害対応省力サービスでした。当時、競合する製品もほとんどなく、「コンサルとサービスの両輪第一弾!」と思っていたんですが、お客さんには高く評価されるものの、ニッチすぎてなかなか売上は伸びませんでした。

AIブームの波にのりサービスリリースするも撤退し会社は縮小

――現在はデータやAIを扱っている企業は珍しくありませんが当時はどうだったのでしょうか
平瀬:
2013年頃は「ビッグデータ」全盛の時代でした。その頃、理科大で人工知能関連技術に造詣の深い長谷川先生(当時の準教授)と縁があり、数学やデータ解析の知識に触れる中で、ビッグデータのその先にはニューラルネットなど人工知能関連技術がくるはずと感じました。
このタイミングで弊社にデータサイエンスやAIをやっていきたいという方に入社いただき、AIに関する取り組みが始まりました
そして第三次AIブームを受けて初開催となった、AI人工知能EXPOに出展したのですが、お祭り状態で歩けないような盛況具合で「この波にのらずしてどうする!?」という感じでしたね。

2017年第1回人工知能EXPOの自社ブースの様子

コンサルティング案件も安定し、体力がついたので「こらろぼ」というエンタープライズ向けのチャットボット作成サービスをリリースしました。
営業的には順調だったものの、SaaSサービスについての知見、体制が不十分な見切り発車をしてしまったこともありスケールするのが難しい作りになってしまっていました。何度か大きな改修も行いました。
今考えてみると「懐刀になるということ」と「スケールするサービス作る」というのは時に矛盾するんです。その両方を同じ組織で同時にやろうとしたことが大混乱を招く一因にもなりました。さすがに資金も底をつきはじめ、稼いでいるコンサル部門のメンバーの離脱も起きました。
やはり原点は「懐刀」と考え、コンサルティングに注力しようと固めたのが7期あたりかと思います。会社として立て直すため、広げ過ぎた領域をいったん縮めるためAIも含めた受託開発を徐々に減らしていきました。この辺りでエンジニアとして入社いただいた方が退職されていきました。

会社を変えるには自分が生まれ変わらなければ

――会社としてかなり苦しい状況かと思うのですが現在は若手の方も入社して活気がもどってきていますが何かきっかけはあったのでしょうか

平瀬:リボーン宣言を全社員の前でしました。
借入金の個人保証が1億円を超えた頃、第三次AIブームの波に乗り、少し事業が拡大してきた中で、自分自身が勘違いしていたことに気が付きました。
もともとは、仕事において若い人たちにもっと活躍してもらいたい、彼らに勝ってほしいという思いがありました。しかし、いつの間にか自分が勝つことだけを考えていたんです。そのことを猛省し、全社員の前で『これまでの自分は本当にイケていなかった』と正直に謝罪し、再出発を誓いました。これが、いわゆる“リボーン宣言”です。

MVVを見直し"懐刀"を軸に会社を変えていった

平瀬:時間はかかりましたが、ミッション・ビジョン・バリューを見直すことにしました。

独立当初は「とりあえず形としてMVVを書いた」という程度で、実際にその理念が組織全体に息づいていたかと言われれば、正直そうではありませんでした。そこがコンサルとサービスを両立させようとする上で、経営の混乱を招いた原因でもあるかと思います。
ミッション・ビジョン・バリューを見直したことで、会社の実態としてもやっぱ「懐刀」っていうところにどんどん寄せていきやすくなってきていています。これを軸に採用や人事なども変えていきました。

――”懐刀”という言葉が印象的ですがこちらについてもう少し教えてください

平瀬:今時のコンサルティングって名前がついている会社には、いろいろな形がありますよね。正直、「人を買って来て売るだけ」のスタイルのところも少なくありません。二次請けに丸投げして「本当に何もしてないんじゃない?」というところもあります。
でも、私たちはそうではありません。ちゃんとお客様の仕事に深くコミットします。言われたことをそのままやるのではなく、お客様にとって本当にやるべきことは何かを考える。
そしてもう一つ大事なのが、絵に描いた餅だけを出さないこと。コンサルの提案では、見た目は綺麗でかっこいい戦略を並べ立てるだけのものも多いですよね。でも、「これどうやって実現するんですか?」とか、「これって本当に動くの?」という部分が全く考えられていないこともあります。私たちは、提案だけで終わらせず、具体的にどう実現するか、どうお客様にとって価値になるかを考え抜きます。そして、しっかりお客様のために努力を重ねていく。「スマートでうまい」だけではなく、お客様にとって必要があればスマートでない方法も選択します。この泥臭さこそが、私たちの「懐刀」としての特徴だと思っています。


――ここからは、リボーン宣言以降入社の社員である関さん、佐藤さんからも話を伺いたいと思います。ここまでの話を受けていかがでしょうか。

関:入社後に聞いたエピソードの点と点が、今つながった感じですね。私が入社したのは2021年、ちょうどコロナ禍の真っただ中でした。当時、ブレインズコンサルティングは、エンジニアの大量離職を乗り越えた後で、立て直しの真っ最中。面接の時にも「今、組織を再構築しているところなんです」と言われて、会社全体で新たな方向に向かおうとしている印象を受けました。

マネージャー 関 哲人 慶応義塾大学経済学部卒業後、国内SIerにて上流工程やプロジェクトマネジメントを経験。後に外資コンサルティングファームにてPMO、業務改善、計画立案などの業務に従事。ブレインズに転職後はシステム刷新プロジェクトや組織改革のプロジェクトを推進。2021年10月入社。

共感した懐刀というスタンスがプロジェクトで実現されている

――前職は外資系コンサルファームということでしたがどのような点に違いを感じますか

関:当社に入社してまず感じたのは、雰囲気も仕事の向き合い方も全然違うということです。
前職では「発注者」と「受注者」いう関係性が基本で、当社のように顧客とコンサルが「パートナー」としてのベースではなかったですね。お客様と一緒に何かを作り上げるというより、指示されたことをこなすような仕事の進め方が多かったように思います。
また前職では、上位職が全体を把握していて、その下のメンバーは指示を着実にこなすという構図がほとんどでした。当社では、案件の初期から新人も含めてマネージャー以下、一緒に取り組んでいく。本人の能力に合わせつつ責任を任せてもらえる場面が多く「自分が仕事を回している」という実感を得られます。
また失敗に対するスタンスが違います。問題がおこると「損失がどれだけ出るか分かってるの?」みたいに、とにかくお金の話が中心でした。でも当社ではまず、「お客様が困っていること」をどう解決するか、という話が最初に出てきます。「これだとお客様が困るよね」「ここを変えないと自分たちも守れないよね」といった議論が中心です。

――佐藤さんはいかがでしょうか

佐藤:最終的に3社に絞ったのですが、その中でも当社を選んだ理由は「懐刀」というキーワードにあります。他の2社は、確かに儲けることを重視していて、効率的なビジネスモデルを持っているなという印象はありました。でも、その姿勢がどうしても「儲けること」の話が先にでている印象を受け
てしまいました。

コンサルタント 佐藤 祐紀
事業会社にて情報システム部の設立に参加し、業務の再定義、運用設計と実行、業務改善を実施。
経費精算パッケージ導入ベンダーとして、システム要件定義から導入、ユーザートレーニングなど幅広くPMを支援。2024年2月入社。

「ここなら自分がやりたいことに近づける」と感じての入社

佐藤:当社ではお客様の課題解決に本気でコミットする姿勢が伝わってきて、「ここなら自分がやりたいことに近づける」と感じたんです。コンサルを目指したのは、エンジニア時代に「自分の提供しているものが本当に価値を生んでいるのか」「お客様の課題にしっかり向き合えているのか」というモヤモヤとした気持ちを抱いたからでした。その答えを見つけるためにも、この会社で挑戦したいと思いました。
コンサルタントになり半年が経ちましたが本気で「お客さんのために」と向き合えば向き合うほど当然ながらそんな生易しいものではない、と厳しさを日々実感しています。お客様の困りごとの真因、イシューとすべきものが何かを考えることを習慣とするようになりましたが、まだどのような場面でもそれらを捉えられるレベルには至っていないと感じています。今日の午前中にも、「これだろう」と思って作成したアウトプットが真因をきちんと捉えられたものではなく、少し伸びてきた鼻をポキポキ折られてきた感じです(笑)
大事なことは満足することなく「本当にこれでいいのか、まだ考えるべきこと、やれることがあるのでは」という問いかけを常に自分自身行うことであり、それのみが成長に繋がると信じて取り組んでいます。

平瀬:佐藤さんは入社後コンサルタントとして立ち上がるのに苦労していて心配したのですが、ある日「パラダイムシフトが起きました!」と話にきてくれて本当にうれしかったです。「今までは、見たものを見えた通りにしか見てなかった、聞いたことを聞こえた通りにしか聞いてなかった。でも今はその背景や真の目的も含めて、奥まで深く見通せるようになり視界が拡がり、解像度が格段に上がった感じです」と。参画プロジェクトのマネージャーからもとてもよくなったと聞いていました。

事業を通じて仕事が好きな人を増やしたい

平瀬:実は「仕事が好きな人を一人でも多く増やしたいという」自分の人生のパーパスがあります。せっかく仕事をするのであれば、より仕事ができるようになって、周りに認められて楽しく仕事した方がいいじゃないですか。
長時間労働は必要ありませんが、仕事の経験は密度の高い取り組みから生まれるもので、一定の努力、仕事に向き合う姿勢が必要だと思います。
恥ずかしながら事業を始めたてで必死だった頃は優秀な人を採用して、仕事は与えるからその中で勝手に育ってくれと思っていた時期もありました。しかし「仕事が好きな人を増やしたい」「若い人に勝って欲しい」という自身の原点を考慮してもそれじゃぜんぜんダメですよね。現在は仕事に向かうマインドセットの醸成や、自分に足りないもの気づいてもらうような支援を試行錯誤しています。コンサルタントしてのテクニカルスキルだけでなく、ポータブルスキルやマインドセットの部分を伸ばしいきたいですね。そして折角縁があり入社していただいた方に、仕事を通じた人生の価値向上の場を提供したいと思っています。

経営陣と共に進む、課題解決のパートナーへ

――社内の教育の方向性についていろいろお聞きできたので、今度は事業の将来像について教えてください

平瀬:まず間違いなく変わらないのは、お客様に対する価値の提供部分になります。
ターゲットとして、今後は売上規模数百億円のような中堅会社に対する超上流からの支援に力を入れていきたいですね。
中堅企業の多くは、求められるシステムがそこそこな規模になる割に内部に十分なIT人材や戦略立案のプロを持っていません。そして大手SIerやファームのいい人材も、中堅企業にまではなかなか手が届かない。そうすると、質の高い支援を受ける機会が少なくなってしまうんです。ここで「懐刀」という私たちのスタイルが活きてきます。この規模の企業では、「お客様に寄り添って、一緒に課題を解決する」ことがすごく求められます。私たちは、ただのアドバイザーとして提案だけして終わるのではなく、実行までしっかり伴走するのが基本のスタンスです。中堅企業にはこれが特にフィットすると思っています。
経営陣との距離感の近さも注力したい理由の一つです。5000億円とか1兆円規模の大企業になると、経営陣と直接やり取りする機会はほとんどありません。でも、中堅企業だと社長や経営陣の方と直に話をして、一緒に意思決定に携わることができる。こういう環境は、実際に支援の手ごたえを感じやすいんです。経営課題に直接入り込んで、すぐに結果を出せるというのは社員のモチベーションや教育においても大きな魅力です。
そういった課題にも一緒に向き合い、具体的な解決策を実現し、少しでも日本の将来に貢献していきたいと思っています。